海外への進出

(5)外国税額控除

日本企業が支店形態で海外に進出した場合、その支店に帰属する稼得利益に対して現地の法人税が課されます。日本の税法では日本企業に対して全世界での稼得利益に対して法人税を課します。つまり海外支店の稼得利益に対しては、現地と日本の二重課税が生じます。

また日本企業が海外子会社を設立した場合、海外子会社にはその子会社の利益に対して現地の法人税が課され、日本親会社は別人格であることから、原則、現地での法人税は課されません。しかし、現地で稼得した利益を日本親会社に還流する場合に、子会社が所在する現地において、日本親会社が稼得した利益と取り扱われ現地による課税が発生する場合があります。この場合も日本企業にとっては、現地と日本の二重課税が生じます。日本の税法及び日本が締約した租税条約では、この二重課税を調整する制度として、外国税額控除を採用しています。

①直接外国税額控除の計算

日本で納付する日本の税法による法人税額から控除できる外国法人税額は、その外国法人税が課された現地での利益相当分に対する日本の法人税額を限度とします。算式に表すと次のようになります。

②直接外国税額控除の適用時期

外国税額控除は、法人が外国法人税を納付することとなった日の属する事業年度に適用されることとなっています。納付することとなった日とは、課税方式の区分により次の通りとなります。

申告納税方式:納税申告所を提出した日、又は更正や決定の通知があった日
賦課課税方式:賦課決定のあった日
源泉徴収方式:源泉徴収の対象となった支払が行われた日

③外国法人税の範囲

外国法人税の対象となる税は、原則、日本の法人税、所得税のように、その国の法令により利益を課税の対象として課される税となります。従って日本の消費税や固定資産税等は利益を基礎として納税するものでは無いことから対象となりません。

また外国法人税であっても、税率が50%を超える部分の金額(高率負担部分)等は控除の対象となる外国法人税から除かれます。

④現地利益(国外所得)の計算

国外所得と外国税額控除限度額は比例することから、国外所得の金額決定は、外国税額控除の計算において重要な要素となります。国外所得は国外に所得の源泉がある所得であり、現実に外国法人税が課された金額とは別の計算方法になります。国外所得金額の計算方法は原則として次のように求めます。

  • 現地での収益から現地での費用を控除した利益
  • 外国法人税が課されない利益は3分の2を乗じる
  • その企業の全世界所得の90%が限度
  • 国内と現地の共通費用は、業種に応じ合理的な基準(収入、資産、従業員等)により配賦

(6)タックスヘイブン対策税制

①概要

タックスヘイブン対策税制は、税負担の著しく低い国・地域に設立した特定外国子会社を利用した租税回避行為に対処するため、特定外国子会社のうち、その株式持分に相当する額を、親会社である内国法人の所得に合算して課税する制度です。

②適用の対象となる内国法人

この規定が適用される内国法人は外国関係会社の発行済株式(その外国関係会社が有する自己の株式等を除きます。)の総数のうちに、外国関係会社の直接及び間接保有の株式数の占める割合が10%以上である内国法人をいいます。
なお、個人も同様に適用の対象となる規定が定められています。

③特定外国子会社等の範囲

次の外国関係会社をいいます。
イ.法人税が存在しない国や地域に本店を有する外国関係会社
ロ.法人税負担割合が20%以下となる外国関係会社

④外国関係会社

外国法人で、その発行済株式(その有する自己の株式等を除く。)の総数のうちに居住者、内国法人等が有する直接及び間接保有の株式等の数の合計数の占める割合が50%を超えるものをいいます。なお、外国法人が外国関係会社に該当するかどうかの判定は、当該外国法人の各事業年度終了の時の現況によります。

⑤適用除外

適用除外基準(事業基準、実体基準、管理支配基準、所在地国基準又は非関連者基準)を全て充足している場合は、合算課税を行わないとしています。

これは、特定外国子会社等が独立企業としての実体を備え、かつ、その所在地国で事業活動を行うにつき十分な経済的合理性がある場合にまでタックスヘイブン課税を適用することは、我が国企業の正常な海外投資活助を阻害する結果を招くことになるので避けるべきであるとの趣旨で設けられたものです。

1.事業基準

主たる事業が「純粋持株会社」、「無体財産権保有会社」、「船舶、航空機リース業」で無い事が要件となります。これらの業種は、所在地による影響が無く、タックスヘイブンを利用した租税回避が行われやすい事から、適用除外基準を受けられないものとなります。

2.実体基準

その本店所在地国において、主たる事業を行う為に必要な事務所、店舗、工場等の固定的施設を有している事が要件となります。固定的施設の所有形態は、自己所有、賃借を問いません。

3.管理支配運営基準

事業の管理、支配及び運営を外国子会社等が自ら行っている事が要件となります。通達では、下記事項を総合勘案し判定する事としています。
①外国子会社等の株主総会、取締役会の開催地
②役員としての職務執行地
③会計帳簿の作成及び保管等が行われる場所
④その他の状況

4.非関連者基準

特定外国子会社等が、卸売業、銀行業、信託業、証券業、保険業、水運業、航空運送業を主として営んでいる場合には、主たる取引の50%超を関連者以外のものと行う事が要件となります。

5.所在地国基準

特定外国子会社等が4に掲げる業種以外の事業を営んでいる場合には、その事業を主として本店所在地国で行っていることが要件となります。

(7)移転価格税制

①概要

日本親会社と外国子会社のように、国際間で関連のある会社間で行われる取引については、その取引に恣意性が介入する恐れがあることから、税制面では、第3者間で行われる取引とは異なる取り扱いが規定されています。

例えば、日本親会社が外国子会社から通常より高い価格で商品を仕入れた場合、又は外国子会社へ通常より安い価格で商品を販売した場合、通常の取引では日本の親会社に残るであろう利益が外国子会社に移転されることになります。

税制面では、このような恣意性の介入による所得の移転を防止するため、国外の関連者との取引については、第三者間で行われた場合に想定される価格、すなわち独立企業間価格に基づいて取引を行う事とすると規定されています。

②適用の対象となる法人

適用の対象となる法人は、日本で法人税の納税義務を有するものであり、内国法人だけでなく、外国法人でも適用の対象となる場合があります。
なお、個人は適用の対象から除かれています。

③国外関連者

上記②で適用の対象とされた法人が、外国法人と下記の関係にある場合、その外国法人は国外関連者とされます。

  • 50%以上の持株関係が有る場合(資本親子関係)
    日本の会社が外国の会社の株式を50%以上保有する場合、外国の会社が日本の会社の株式の50%以上を保有する場合
  • 親会社が同一の会社の場合(資本兄弟関係)
    日本の会社と外国の会社がそれぞれ同じ会社に50%以上の株式を保有されている場合
  • 実質的支配関係が有る場合
    次のような事実により、一方の会社が他方の会社の事業方針を実質的に決定できる関係にある場合
       イ.一定数の役員の兼務関係等
       ロ.相当な資金の援助、借入保証
       ハ.取引の依存
  • 連鎖的に資本関係又は支配関係がある場合(連鎖関係)

④適用の対象となる取引

移転価格税制の適用の対象となる取引は、国外関連者との資産の売買や役務の提供等、対価性のある全ての取引が対象となります。

⑤独立企業間価格とは

独立企業間価格とは、第三者間で行われた場合に想定される価格と言えますが、次のような算定方法があります。なお、22年度税制改正により、国外関連者間における取引価格の交渉過程等において、検討を要する場合に特に留意すべき事項等が事務運営要領や通達により明確化されます。

  • 独立価格比準法
    関連の無い第3者間において、同種同様の取引をした場合に設定される価格を用いる方法
  • 再販売価格基準法
    購入側が第3者に再販売した場合の粗利率をベースに購入価格を設定する方法
  • 原価基準法
    販売側が要した原価に通常の利益を加えて販売価格を設定する方法
  • その他の方法
    上記に、準ずる方法、利益分割法、取引単位営業利益法等